この記事では、韓国相撲「シルム」について解説します。シルムは日本語訳の通り、韓国で行われる相撲競技のこと。相撲は日本の国技でもありますが、実は韓国相撲にモンゴル相撲など、他国にも独自の相撲が存在しているんです。今回は、その中でも隣国の韓国相撲について掘り下げてみましょう。エンタメ交流の深い日韓ですから、同じ相撲という競技においてどんな違いがあるのか、興味深いですね。
韓国相撲(シルム)とは?
シルム(씨름)は、朝鮮半島に古くから伝わる伝統的な格闘技で、日本では「韓国相撲」と呼ばれることもあります。砂を敷いた円形の土俵の上で、腰と太ももに巻いた布の帯「サッパ」を握り合い、相手を倒す競技です。高句麗時代の古墳壁画にも組み合う人々の姿が描かれており、少なくとも千五百年以上の歴史があると考えられています。旧暦の端午節(タノ)や秋夕(チュソク)といった節句の祭りで盛んに行われ、2018年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。
参考:NEWT
基本的なルール
試合は砂の土俵の中央で、二人の選手が向かい合って片膝をついた姿勢から始まります。互いに右肩を相手の肩に当て、右手でサッパの腰の部分を、左手で太ももの部分を握り、審判の合図で立ち上がって組み合います。勝敗は、相手の膝より上の体のどこかが地面についた時点で決まります。手や膝がついただけでは負けにならず、帯を離さずに倒すことが求められるため、純粋な技と力のぶつかり合いになります。
技と試合の進め方
シルムの技は、足を掛けて倒す「足技」、腰や腹に乗せて投げる「腰技」、相手の力を利用して返す「手技」などに大別されます。代表的なものに、相手の足を内側から払う「アンダリ」、腹の上に持ち上げて投げる「ペジギ」などがあります。試合は三本勝負で、二本先取した方が勝ちとなるのが一般的です。現代の大会では体重別の階級が設けられており、最重量級の優勝者には「天下壮士(チョナジャンサ)」の称号が与えられます。
日本の相撲との違い
ここからは、日本の相撲と韓国相撲の違いについて見てみましょう。私たちが知る通り、相撲は日本の国技です。では「韓国相撲」とは何なのか、日本の相撲とどのような違いをもって、韓国相撲という独立した競技が生まれたのか、気になりますよね。実は日本の相撲と韓国相撲は、それぞれ別々に生まれた競技なのだそうです。人間が組み合って力を競う行為は、ユーラシア大陸の各地で自然発生的に生まれた、きわめて普遍的な文化。そのため、どちらも格闘技として注目されてきました。
勝敗の決まり方
最も大きな違いは、勝敗を決める条件にあります。日本の相撲は、相手を土俵の外に出すか、足の裏以外の体の部分を土俵につけさせれば勝ちとなります。これに対してシルムには場外という概念がなく、相手の膝より上の体の部分を砂地につけさせることだけが勝利条件です。そのため、土俵際で粘って押し出しを避けるといった駆け引きは生まれにくく、組み合ったまま技で倒し切る攻防が中心になります。また、シルムは三本勝負で二本先取した方が勝ちとなる形式が一般的で、一発勝負の相撲とは試合の組み立て方も異なります。
試合の始め方と装束
試合の入り方にも大きな差があります。相撲は立ち合いで両者が呼吸を合わせ、全力でぶつかり合って始まります。一方のシルムは、二人が片膝をついて向かい合い、互いの肩を寄せて帯を握った状態から、審判の合図で同時に立ち上がります。つまり最初から組み手が決まっているのが特徴です。装束については、相撲が腰回りに締める「まわし」だけなのに対し、シルムは腰と太ももの両方に「サッパ」と呼ばれる布の帯を巻き、これを握って技をかけます。土俵も、相撲は固めた土で直径約4.55メートルであるのに対し、シルムは砂を敷いたより広い円形で、投げられた際の衝撃を和らげる造りになっています。
文化的な位置づけ
日本の相撲は、もともと神事として発展した歴史を持ち、四股や塩まきなどの儀式的な作法が現在も大切にされています。番付に基づく職業制度が確立している点も、大きな特徴です。これに対してシルムは、端午節や秋夕といった節句の祭りで人々が楽しむ庶民的な娯楽として育ってきました。優勝者に牛が贈られる習慣が長く続いたことも、その名残といえます。現在は体重別の階級を持つスポーツとして大会やプロリーグが開催されており、神事的な色合いよりも、競技としての側面が強く打ち出されています。
参考:日本相撲協会
韓国相撲の歴史
相撲という競技は、モンゴルのブフ、トルコのヤールギュレシュ、中央アジアの各地の組み打ち競技など、同じ系統に属する格闘技が広く分布していますよね。日本の相撲にも、『日本書紀』に記される野見宿禰と當麻蹶速の力くらべの伝説があり、シルムも高句麗の古墳壁画に組み合う姿が残っています。どちらかがどちらかの起源というよりも、東アジアの人々が古くから親しんできた力くらべが、それぞれの土地で独自の形に育ったと考えられます。
朝鮮半島で育った
韓国相撲はもともと、高句麗の時代から祭りや節句の行事と結びつきながら受け継がれてきました。端午節や秋夕に村ごとの代表が競う「庶民の娯楽」として定着したそうです。20世紀に入ると近代的な競技大会が開かれるようになり、1980年代には民俗競技を振興する流れの中でプロリーグが発足。今では、民族を象徴する伝統文化としての地位を確立したのですね。
日韓交流も
なんと、日韓両国の相撲が交流を持ったという見方もあるそうです。古代には朝鮮半島と日本の間で人や文化の往来が盛んで、力くらべの技や風習が行き来した可能性は否定できません。ただし、これを裏づける確かな史料は少なく、まだ研究者の間でも断定はされていないとのこと。現時点では、共通する古い土壌から、それぞれが独自の発展を遂げたと理解するのが、もっとも妥当な見方といえるでしょう。
まとめ
韓国相撲とは何なのか、ルールや日本相撲との違いについて解説しました。相撲にはさまざまな種類があり、中央アジア各地で違った形をもって、競技として存在していましたね。日本の国技でもある相撲ですが、韓国相撲はまたルールや勝負の決まり方に違いがあり、観戦してみると面白いですよ。相撲の種類に興味がある人は、ぜひ韓国相撲も見てみてはいかがでしょうか。